「風土色」と「茶系顔料」と「桜鼠」~心地よさを巡る旅4~

皆さんこんにちは。
伝統文化萌えカラーコーディネーター安田です。

風土色、という言葉をご存知でしょうか。
風土の違いから生じる、それぞれの土地の「特徴や特色」のことです。
そのなかでも、風土の色彩について考えてみますと、ポーターズペイントとの面白い共通点が見えてきました。

日本の風土の色彩がどんなものか。

現在読んでいる『日本の都市から学ぶこと~西洋から見た日本の都市デザイン~』(バリー・シェルトン著 鹿島出版社)に、面白い記述がありました。

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明治時代、長い鎖国明けの日本に来たモース(大森貝塚を発見した人)が、西洋人からの視点で、初めて日本の住宅について語っています。

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「外観が脆弱であり」「色彩に乏しい」ことに「確かに失望した」(中略)
こうした同じ建物が集合して「薄暗い効果」と「全般的な単調さ」をもった「住宅の灰色の海」を生み出している。

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と。
想像するに、通りをはさんで両側に、長屋が同じ素材で、同じつくりで軒を連ねていたのでしょう。
確かに、同時代にヴィクトリアン様式が流行していたアメリカ人が初めて見たら「地味だ。」と思うでしょう。

しかし、もう一歩、想像を進めて、考察していくと、違う景色が見えてきます。

江戸時代後期、幕府による「奢侈禁止令」で、「庶民は贅沢すな!」というお達しがあったことを逆手にとって、江戸っ子たちがその状況を楽しむために編み出した

「四十八茶百鼠(しじゅうはっちゃひゃくねずみ)」

という「地味色の見本帳」がありました。
読んで字のごとく、茶系で48色、グレー系で100色、くすんだ色をこれほど細かく使い分けていたのです。粋ですね!

ぱっと見区別がつかない色差を、巧みにあやつり楽しむ「風土」がそこにあったのです。

さて、ポーターズペイントの色をつくる上で、
「茶系顔料」は最も重要な要素を占めていると言っても過言ではありません。

世界一豊富な16種類の顔料のうち、実に6種類も茶系の顔料が占めているのです。

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これによって生み出された色は、
全体にトーンを落とし、くすませてくれます。
結果として私たちにとって「落ち着き」を与えてくれる色に仕上がります。

「桜鼠」は四十八茶百鼠のうちの一色です。
ポーターズペイントの「和の色」のカラーカードにもあります。

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ポーターズペイントの中でも人気色の一つで、
微妙に灰色を帯びた淡い桜色です。

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心地よい空間をつくる上で、
その土地の気候・風土・歴史・文化から、
大きな文脈を読み解いていくと、
配色のヒントが隠れていることがあります。

ご自宅のカラーコーディネートをお考えの際のヒントにしてみてください。

では。